「頑張る」より「回復」:クライオ・レッドライト・PEMFと森林浴の科学

by Tateki Matsuda

「頑張る」より「回復」:クライオ・レッドライト・PEMFと森林浴の科学

「最高のパフォーマンスは、力むことではなく、力を抜くことから生まれる」。古来の武道で繰り返し説かれてきたこの言葉を、あなたは日々の仕事や運動にどれだけ活かせているでしょうか。多くの日本人は「頑張る」ことには長けています。けれど、その対になる「回復」を同じ真剣さで扱える人は、ごくわずかです。

フィンランド人バイオハッカーのテーム・アリナ(Teemu Arina)が、東京の冷却療法サロンを率いる元プロボクサー、マイケル諏訪(Michael Suwa)と対談した『Biohacker's Podcast』のエピソード「Japanese Biohacking Tech」。ここで語られたのは、全身クライオセラピー・レッドライト療法・PEMF(パルス電磁界)といった最先端の回復技術と、「森林浴」「頑張る」「腹八分目」に代表される日本の伝統的な知恵が、同じ一点で交わるという話でした。その一点とは「回復(リカバリー)」です。

この記事では、対談の内容を一次研究のエビデンスとともに検証し、海外のバイオハッカーが日本のウェルネスをどう見ているのかを翻訳します。先に結論を言えば、敵は加齢そのものではありません。敵は、休まず働き続けることで生まれる慢性的な調節不全(dysregulation)と、心と身体がバラバラになる断片化です。目指すゴールは、足し算でも若返りでもなく「統合(integration)」。そのために何を引き算し、何を足すのか?順番が重要になります。

1. クライオ・レッドライト・PEMFとは? 「回復」がバイオハックの核心である理由

これら3つはすべて「ホルミシス(適度なストレス刺激)」を使って、身体が本来持つ回復のスイッチを入れる技術です。難しく聞こえますが、原理は運動や入浴と同じ。身体に短く適度な刺激を与えると、それに適応しようとして回復力が強まる、という仕組みです。

まず用語を、誰でも分かる言葉に置き換えます。クライオセラピー(全身冷却療法)は、マイナス100℃前後の冷気を浴びる「超強力なアイスパック」です。冷水と違い空気で冷やすため、芯まで凍らせずに皮膚表面の温度だけを一気に下げます。レッドライト療法(光生体調節/フォトバイオモジュレーション、略してPBM)は、赤色光と近赤外線という特定の波長の光を当てる「細胞への充電」のような技術です。PEMF(パルス電磁界療法)は、微弱な電磁パルスを当てて血流や組織修復のシグナルを整える、いわば「身体への通電マッサージ」にあたります。

ここで多くの人が誤解します。これらは「炎症を消す」技術として宣伝されがちですが、炎症そのものが敵なのではありません。炎症は、運動後に筋肉が強くなるためにも必要な、適応のプロセスの一部です。問題なのは、炎症が引かずにくすぶり続ける慢性炎症と、回復が追いつかない状態です。だからこそ大切なのは、急性の適応反応はむしろ歓迎し、慢性的な調節不全だけを減らすという視点。後半で見る「正直なトレードオフ」は、この違いから生まれます。

そして、HOLOLIFEが何度でも繰り返す原則が、ここでも先に立ちます。ガジェットやサプリは「引き算の後」です。マイケル自身、対談のなかで日本人が「がんばる」「我慢」という言葉のもとで休息をとらず、慢性的な疲労に陥りやすいと指摘しています。高価なマシンを足す前に、睡眠不足・超加工食品・慢性ストレス・オーバートレーニングという4つのストレッサーを引く。話はそれからです。回復技術は、引き算を終えた人がさらに上を目指すための「掛け算」であって、土台の代わりにはなりません。

2. 科学的エビデンス:4つの回復技術を強度別に検証する

結論から言えば、これらの技術には確かなメカニズムと一定の研究の裏づけがある一方で、「万能薬」と呼べるほどの強い証拠はまだありません。誠実に伝えるために、各項目で「どの強さの研究か」を明示します。強い順に、メタアナリシス/ランダム化比較試験(RCT)> ヒト観察・小規模介入研究 > 動物・試験管研究、という順番です。

2-1. 全身クライオセラピー:痛みと主観的回復には有望、ただし証拠の確実性は低い

メカニズムは比較的よく分かっています。皮膚が急冷されると神経の伝導速度が落ち、体内の天然の鎮痛物質(内因性オピオイド)が刺激されて痛みの感受性が下がります。同時に炎症性サイトカイン(IL-1βなど)の上昇が抑えられる例も報告されています。あるレビューでは、運動前に全身クライオ(マイナス130℃・3分)を行うとIL-1βとIL-6の上昇が抑えられたとされています[5]

では「回復が速くなる」と言い切れるか。ここは正直であるべき部分です。運動後の筋肉痛や回復に対する効果を検証した質の高い研究を総合すると、結論はばらつきます。コクランの系統的レビュー(2015年)は、全身クライオが運動後の筋肉痛を防いだり回復を早めたりするという主張を支持するには、質の高い証拠が不足していると結論しました[4]。2026年に公表された51件のRCT・参加者1,243名を統合したネットワークメタアナリシスでも、運動直後の筋肉痛をどの冷却法も有意には減らせず、24〜48時間後では冷水浴や局所冷却のほうが安定して有効でした。全身クライオはジャンプ動作などのパフォーマンス回復に利点を示しましたが、証拠の確実性(GRADE)は最も低い段階と評価されています[6]

つまり全身クライオは、痛みの緩和や主観的なリフレッシュ感には役立ちます。タイムハックとしての魅力(わずか3分で済む)は本物ですが、効果の大きさはバイオハッカーとして回復度合いを個人でデーターを取り検証していく必要があります。

2-2. レッドライト療法(PBM):細胞エネルギーへの作用は確かで、応用は分野ごとに証拠が異なる

レッドライト療法のメカニズムは、研究が最も進んでいる領域のひとつです。赤色光・近赤外線(おおむね600〜1100ナノメートル)が、細胞の発電所であるミトコンドリア内の酵素「シトクロムcオキシダーゼ」に吸収され、エネルギー通貨であるATPの産生を後押しします。一酸化窒素(NO)の放出もここに関わると考えられています[7][8]。テームが対談で技術的に補足したとおりの経路です。

応用面では、用途によって証拠の厚みが変わります。睡眠については、エリート女子バスケットボール選手20名を対象としたランダム化比較試験で、14日間の全身赤色光照射(658ナノメートル・1日30分)が睡眠の質、血中メラトニン、持久力を改善したと報告されています。メラトニンは照射群で38.8 pg/mL、対照群で23.8 pg/mLでした[9]。 ただしこれは少人数・特定の競技者集団での結果であり、一般の人で同じ効果が出るかはまだ検証途上です。

2-3. PEMF(パルス電磁界):関節の痛みと機能には中程度の証拠、ただし機器のばらつきが大きい

PEMFは、一酸化窒素のシグナル伝達を変化させ、血管の緊張度や組織修復に影響を与えると考えられています。臨床面では、変形性関節症が比較的よく研究されてきました。12件のRCTを統合したメタアナリシス(2018年)は、PEMFが膝と手の変形性関節症で偽刺激(シャム)に比べて痛みを和らげ、身体機能を改善したと報告し、重篤な有害事象の差はなかったとしています。1回30分以下の照射のほうが効果的でした[10]。

17件・1,197名をまとめた別の系統的レビューでも、膝の変形性関節症で痛み(VAS)と機能(WOMAC)の改善が報告されています[11]。一方で、効果を認めなかった試験や、1か月時点で有意差が出なかった近年のレビューもあります。研究ごとに機器・周波数・照射時間がばらばらで、それが結果のばらつきにつながっているのが現状です。骨折の癒合促進など整形外科領域での利用実績もありますが、「どんな不調にも効く」という万能の証拠ではない、という距離感が適切です。

2-4. クレアチン:回復技術と相性のよい「細胞のエネルギー緩衝材」

マイケルもテームも基本サプリとして挙げたのがクレアチンです。クレアチンは細胞内のホスホクレアチン貯蔵を増やし、ATPの素早い再生を助けます。筋力・筋量への効果は最も確立されたサプリの1つですが、近年は脳機能への関心も高まっています。

テームは「4時間しか眠れなくても、20〜40gのクレアチンを摂れば、8時間眠ってクレアチンを摂らなかった人を上回る」と語りました。元になった研究はおそらくGordji-Nejadら(2024年)で、健康な成人15名に体重1kgあたり0.35g(70kgで約25g)の単回投与を行い、21時間の睡眠不足下で認知課題と脳のエネルギー代謝を測定したものです。結果は、クレアチンが処理速度を含む認知パフォーマンスの低下を和らげ、脳内の高エネルギーリン酸の変化を示しました[12]

ただし正確には、この研究が示したのは「睡眠不足による認知の低下を一部打ち消した」ことであって、「徹夜が8時間睡眠に勝った」ことではありません。被験者15名の単回の実験であり、通常クレアチンが脳に届くには数週間の継続摂取が必要とされてきた点を覆す、まだ予備的な知見です。期待は持ちつつ、過大評価は禁物——これも誠実な読み方です。なお持病のある方や服薬中の方は、サプリメントを始める前に医師に相談してください。

3. 世界が再発見した日本の知恵:森林浴・頑張る・逆輸入されたクライオ

この対談のいちばん面白いところは、最先端のマシンの話が、最終的に日本の古い知恵に着地した点にあります。海外のバイオハッカーが日本を「ハイパフォーマンスと回復の融合をリードする国」と見ている一方で、当の日本人は自分たちの哲学を忘れかけている——テームとマイケルは、その逆説を何度も指摘しました。

3-1. 森林浴:科学が追いついた日本発の予防医学

結論を先に言えば、森林浴(Shinrin-Yoku)は、日本発でありながら世界で最もよく研究された自然系の健康介入の1つです。日本医科大学の李卿(Qing Li)らの一連の研究は、「森林医学(Forest Medicine)」という新しい分野を築きました。報告されている効果は、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、ストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリン)の低下、副交感神経優位への切り替え、血圧・心拍の低下などです[1]

具体的な数字も出ています。2007年の研究では、中年のビジネスパーソンが2泊3日の森林滞在を行った後、NK細胞の活性が約50%上昇し、その効果が30日以上持続しました。24か所の森林をまとめたレビューでは、森林散歩の後にコルチゾールが都市散歩と比べて平均約12.4%低下したと報告されています。樹木が放つ香り成分「フィトンチッド」を実験室で吸わせるだけでも、森林滞在と同様のNK細胞の上昇が見られたことから、心理的なリラックスだけでなく化学的な環境そのものが効いていると考えられています。広い緑地への接触と健康をまとめたメタアナリシスでも、ストレスや血圧の面で一貫した利益が示されています[1][2][3]

ただし誠実に付け加えると、これらの多くは少人数のフィールド研究で、研究デザインのばらつきも大きく、因果を厳密に断定するには限界があります。それでも、コストがほぼゼロで副作用がほとんどない「引き算ファースト」の介入として、森林浴は極めて有力です。マイナス100℃のマシンに行く前に、まず近くの公園や森を歩く——優先順位はそちらが先です。

3-2. 「頑張る」と「怠惰の法則」:成長と回復のバランス

対談の核心的なテーマが、この「頑張る(Ganbaru)」と「我慢(Gaman)」をめぐる話でした。マイケルは、洗濯板で2時間こするより洗濯機を使う発想——彼が「怠惰の法則(効率を重視するマインドセット)」と呼ぶもの——こそがバイオハックのイノベーションを生むと語ります。2時間雪の中に立つ代わりに3分のクライオで済ませる。これは「サボり」ではなく、回復を効率化する設計思想です。

ここでHOLOLIFEの「引き算ファースト」と、運動生理学の現実が重なります。成長には刺激が必要ですが、刺激と同じだけ休息と回復が要ります。交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)のバランスと同じで、回復をおろそかにすれば、どれだけ頑張ってもパフォーマンスは頭打ちになります。「頑張る」だけの文化が見落としているのは、この当たり前の物理です。仕事と同じ真剣さで回復を扱う——それが、海外のバイオハッカーが日本に投げかけた問いでした。

3-3. 逆輸入されたクライオセラピー:日本で生まれ、欧州を経て帰ってきた技術

象徴的なのが、クライオセラピーそのものの歴史です。全身クライオは、1978年に日本の医師(Yamauchi/Yamaguchiと複数の表記で伝わる)が関節リウマチの痛み管理のために考案したと、広く伝えられています。皮膚表面を急速に冷やすことで内因性オピオイドが放出され、痛みが和らぐ、その発見が出発点でした。技術はその後、ポーランドをはじめとする欧州のスポーツ回復センターで発展し、現在になって「新しいもの」として日本に逆輸入されています。

テームはこれを、日本人が世界に与えた哲学の数々と重ねました。本質でないものを削ぎ落とす「改善(Kaizen)」、毎日ひとつの変数だけを少しずつ直していくトヨタ生産方式的な発想は、バイオハックそのものだと。劇的に生活を変えるのではなく、睡眠のタイミング、歩く姿勢、食事の質を一度に1つずつ整える。これが継続可能な自己最適化です。

3-4. 比較表:日本の概念 × 現代科学の対応

対談で挙がった日本語の概念を、現代のバイオハックの言葉に翻訳すると、驚くほどきれいに対応します。以下は、伝統的な知恵を「今日の実践」に落とし込むための対応表です。

日本の概念 意味 現代科学・バイオハックでの対応 今日の実践
森林浴(Shinrin-Yoku) 森に身を委ねる 副交感神経の活性化、コルチゾール低下、NK細胞の活性化 週1回・2時間の森歩き/平日は緑地を散歩
頑張る・我慢(Ganbaru / Gaman) 限界まで努力する 諸刃の剣。回復を伴わなければ慢性ストレス・オーバートレーニングの原因に 頑張りと同量の回復を予定に組み込む
改善(Kaizen) 継続的な微修正 1つの変数だけを変える自己実験。複利的に積み上がる 今週は「就寝時刻」だけを15分早める
間(Ma) 意図的な余白・静寂 認知負荷の削減、デジタル刺激の引き算 タスクの合間に画面を見ない数分をつくる
座禅(Zazen) 坐って整える 注意力の訓練、情動への過剰反応の抑制 朝に5〜10分の静坐
禊(Misogi) 冷水と呼吸による浄化 規律ある不快=寒冷曝露のホルミシス刺激 シャワーの最後に冷水を30秒
腹八分目(Hara Hachi Bu) 満腹手前で止める 過食を防ぐ実践的な食習慣。弁当箱の発想に通じる 「もう少し食べたい」で箸を置く
侘び寂び(Wabi-Sabi) 不完全さを受け入れる 過度な最適化・完璧主義への解毒剤 体型や数値への過剰な不安を手放す
生きがい(Ikigai) 生きる目的 健康行動の「錨」。目的が習慣を支える なぜ整えたいのか、理由を1行で書く

マイケルが最後に語ったのは、東京のようなハイテク都市で多くの人が「大地とのつながり」を忘れている、という指摘でした。コンクリートの上を歩き、常に靴を履き、自然光を浴びない生活。バイオハックとは最新技術を使うことだけではなく、私たちが忘れかけている自然への接続を思い出す姿勢そのものだ——この視点は、HOLOLIFEが大切にする「ライフスタイルとしてのバイオハック」と深く重なります。

4. レベル別・回復プログラム(初級/中級/上級)

ここからは、対談で語られた要素を、安全で持続可能な形に整理した実践プログラムです。大原則は変わりません——すべては引き算が先。どのレベルでも、まず睡眠・超加工食品・慢性ストレスというストレッサーを減らしたうえで取り組んでください。なお持病のある方、妊娠中・授乳中の方、服薬中の方、極端な寒冷・電磁刺激に不安のある方は、新しいプロトコルを始める前に必ず医師に相談してください。

初級:引き算と「無料」の回復(時間10〜15分/頻度 週2〜3回)

  • 就寝時刻を一定にし、寝る前のスマートフォン(「間」の実践)を減らす
  • 温かいシャワーの最後に冷水を30秒(「禊」の入口)。冷水曝露の入門として無理のない範囲で
  • 起床後すぐに自然光を浴びる。曇りの日でも屋外の光は室内よりはるかに明るい
  • 週末に近くの公園や森を歩く。歩数より「感覚を自然に向ける」ことを優先

中級:温冷とリズムを整える(時間20〜25分/頻度 週3〜4回)

  • 温冷交互浴(温かい湯と冷水を交互に)で自律神経のトレーニング。サウナ文化のある日本では実践しやすい
  • レッドライトパネルを就寝前に使う場合は、製品の指示に従い照射量を守る(光は「足しすぎ」も逆効果)
  • 週1回・2時間の本格的な森林浴を予定に固定する
  • 食事は「腹八分目」を意識し、満腹の手前で終える

上級:回復技術を「重ねる」(時間25〜30分/頻度 週4〜5回)

  • 全身クライオまたは冷水浴 → 再加温 → PEMF → レッドライト、という順で重ねる(理屈は次章)
  • 2泊3日など、まとまった自然滞在を計画に入れる(NK細胞研究が示す持続効果を狙う)
  • 必要に応じてクレアチンを基本サプリとして検討する
上級者への注意:極端な寒冷曝露は「冷やせば冷やすほど良い」ものではありません。睡眠不足で強いストレス下にあるときの過度な寒冷は、かえって回復資源を消耗させます。また後述のとおり、筋肥大を目的とする場合は筋力トレーニング直後の寒冷曝露を避けるべき場面があります。体調がすぐれない日は迷わず休む、これも上級者の判断力です。

自己実験のポイント:まずは2週間、毎日「睡眠スコア(主観で1〜10)」「気分・活力(1〜10)」「安静時心拍数」を記録し、回復介入を入れた日と入れなかった日を比べてみましょう。可能であれば、ウェアラブルで心拍変動(HRV)も記録すると、より詳細に分析できます。万能の解決策はなく、効果には個人差があります。だからこそ、他人の正解ではなく「自分のデータ」で確かめる姿勢が重要です。測定の詳しい考え方は生理学カテゴリも参考になります。

5. 応用と統合:技術を「重ねる」ときの考え方と正直なトレードオフ

結論から言えば、複数の回復技術を組み合わせる「スタック」は理屈の上では理にかなっていますが、組み合わせ自体を検証した研究はまだ少ないのが実情です。マイケルが紹介したお気に入りの順番は、短い寒冷曝露(クライオ約3分)→ 少し時間をおいて再加温し血流を戻す → 血管や組織修復のシグナルを支えるPEMF → 最後にレッドライト・近赤外線、というものでした。クレアチンを加えれば細胞のエネルギー緩衝能が高まり、回復シグナルへの反応が良くなる、という発想です。

それぞれの技術が異なる細胞経路(クライオは物理的なホルミシス、PEMFは一酸化窒素シグナル、レッドライトはミトコンドリアのATP産生)に働くため、相乗効果が期待できるのは妥当です。ただし、ここでも「敵は断片化、ゴールは統合」という原則を忘れないでください。バラバラの技術を闇雲に足すのではなく、睡眠・栄養・運動・自然という土台の上に、目的に合わせて少数を重ねる。これが「統合」です。

正直なトレードオフ:回復が、成長を邪魔することがある

ここがこの記事で最も重要な一節です。「炎症を抑える」ことは、いつでも善ではありません。とくに筋肉を大きく・強くしたい人にとっては、運動直後の寒冷曝露が、目的そのものを妨げる場合があります

Robertsら(2015年)の研究では、12週間の筋力トレーニングにおいて、各セッション直後に冷水浴を行ったグループは、積極的回復(軽い運動)を行ったグループに比べて、筋量と筋力の長期的な増加が抑えられました。冷却が、筋肥大を司るシグナル経路(mTORC1/p70S6K)やサテライト細胞の活性化を鈍らせたためです[13]

2024年のメタアナリシスでも、運動後の冷水浴が筋肥大の反応を鈍らせるという結論が支持されています[14]。理由はシンプルで、冷却は「筋肉を成長させるための炎症シグナル」まで一緒に消してしまうからです。

これは、回復技術が悪いという話ではありません。目的によって使い分けるべきという話です。試合シーズン中で次の試合までの回復を最優先するなら、寒冷の回復効果は価値があります。一方、オフシーズンに筋肉を増やしたいなら、筋トレ直後の寒冷は避け、数時間あけるか、その日は使わない判断が合理的です。上澄みの効果だけを売らず、代償も併記する——これがHOLOLIFEの考える健全なバイオハッキングです。

6. コミュニティと参考リンク

回復は、一人で頑張るものではありません。あなたの自己実験のデータや気づきを、ぜひ日本人バイオハッカーのコミュニティで共有してください。HOLOLIFEの無料Discordコミュニティでは、睡眠・寒冷曝露・栄養・回復の実践について、同じ問いを持つ仲間と日々情報を交換しています。この記事が役に立ったら、SNSでのシェアやコメントでの感想もお待ちしています。

今回取り上げた対談の原典は、テーム・アリナの『Biohacker's Podcast』エピソード「Japanese Biohacking Tech With Michael Suwa」です。HOLOLIFEのポッドキャストでも、回復とバイオハックをテーマにした対話を配信しています。回復技術の各論をさらに掘り下げたい方は、バイオハッキングサプリメントのカテゴリもあわせてご覧ください。

なお対談ゲストのマイケル諏訪氏が率いる「CRYO TOKYO(麻布十番ほか)」は、東京でクライオ・レッドライト・PEMFを複合的に提供するサロンです。本記事は特定の施設やサービスの効果を保証するものではなく、各技術を一般的な研究の観点から解説したものです。体験を検討する際は、ご自身の体調と目的に照らし、必要に応じて医療者に相談してください。

ポッドキャスト文字起こし

テーム・アリナ: 『Biohacker's Podcast』へようこそ。ホストのテーム・アリナ(Teemu Arina)です。本日は「CRYO TOKYO」のゼネラルマネージャーであり、「日本クライオセラピー普及協会」の創立メンバーでもある、マイケル・スワ(Michael Suwa)さんをお迎えしています。

マイケルさんは元プロボクサーであり、WBCアジア・スーパーウェルター級王座を獲得したほか、通算で6つのチャンピオンベルトに輝いた経歴をお持ちです。そして、アメリカでクライオセラピー(超低温精神物理療法/冷却療法)に出会ったことをきっかけに、その体験を日本に導入されました。

私にとって日本は非常に興味深い国です。ハイパフォーマンスと「リカバリー(回復)」の融合という分野において、まさに世界をリードしている国だからです。フィンランドを訪れる日本の方々も多く見かけますが、日本とフィンランドの間には100年以上の深い繋がりがあります。日本の人々には、特有の静けさや、強い決意、そして人間の人格における最も重要な美徳とも言える性質が備わっていると感じます。

つまり、名誉や規律を重んじ、物事をやり遂げるという基本的な美徳です。そして、どのようなハイパフォーマンスな活動を行うにしても、それを「最適なリカバリー」と組み合わせる必要があります。マイケルさんは、日本やアジア全域において、クライオセラピーやパルス電磁界PEMF}療法の普及に尽力されてきました。日本で唯一の「米国認定クライオセラピー・プロフェッショナル」の資格を持つ人物でもあります。

番組へようこそ、マイケル・スワさん!

マイケル・スワ: お招きいただき、大変光栄です。ありがとうございます。

テーム・アリナ: 素晴らしいですね。あなたは元々プロのアスリートとして活躍されていたわけですが……。

マイケル・スワ: はい。プロボクサーとして長年リングに上がっていました。その経験を活かして、現在は人々のトレーニングやボディメイクをサポートしています。ウェルネス業界には約10年携わっています。

テーム・アリナ: なるほど。近年非常に人気のあるバイオハック、すなわち「クライオセラピー(冷却療法)」「PEMF(パルス電磁界)療法」、そして「レッドライト(赤色光)セラピー」の3つを組み合わせることで、具体的にどのようなメリットを実感されていますか?

マイケル・スワ: 最初は、日本でクライオセラピーの提供からスタートしました。当時は、日本の人々にとってクライオセラピーがどのようなものか、まだ未知の部分が非常に多かったのです。そこから徐々にビジネスを広げ、PEMFデバイスやレッドライトセラピーなども取り入れるようになりました。

日本には「禅(Zen)」や「生きがい(Ikigai)」といった素晴らしいマインドセットが根付いています。しかしその一方で、限界を超えてがんばりすぎてしまい、慢性的な疲労(極度の疲弊状態)に陥るまで自分を追い込んでしまう傾向があります。彼らはまだ、クライオセラピーなどのバイオハック製品がもたらす素晴らしいメリットを十分に理解していません。

テーム・アリナ: なるほど。ご自身の経験についてお聞きします。あなたはプロのアスリートとして過酷なスポーツの世界で戦ってこられましたが、現役時代にこれらのテクノロジーをご自身でも使われていたのですか?

マイケル・スワ: はい、現役キャリアの最後の時期に使用していました。10年ほど前、YouTubeでプロボクサーのフロイド・メイウェザーがこのマシン(クライオセラピー)を使っているのを見つけたのが最初です。当時それを見て、「ワオ、これは一体何だ?まるでタイムマシンのようだな」と強い衝撃を受けました。

それで、実際にアメリカまで行って体験してみることにしたんです。そして、たったの3分間で効果が出ることに、本当に驚かされました。まさに究極のタイムハックです。

それまで私は、肩の痛みを解消するために鍼治療やマッサージ、ありとあらゆる施術を試してきましたが、一向に痛みが消えることはありませんでした。しかし、わずか3分間のクライオセラピーを受けただけで、その肩の痛みが完全に消え去ったのです。本当に驚愕しました。「これこそ未来の治療法だ。日本に持ち帰れば素晴らしいものになる」と確信し、日本へ導入することを決めました。

最初はアスリート向けに提供し始めましたが、現在は一般のお客様が全体の大多数を占めています。

テーム・アリナ: なるほど、クライオセラピーの効果ですね。

マイケル・スワ: その通りです。

テーム・アリナ: 現在はクライオだけでなく、パルス電磁界PEMF療法やレッドライトセラピーも組み合わせて提供されていますが、これら3つの療法の組み合わせには、どのような相乗効果(シナジー)があるのでしょうか?

マイケル・スワ: これらは実際に、すべてが相互に作用して相乗効果を生み出します。

クライオの後にレッドライトセラピーを行うと、非常に効果的で、細胞にエネルギーを注入して活性化(ブースト)させることができます。また、これにPEMFも組み合わせて利用することができます。

この3つのセラピーは、どのように組み合わせても効果を発揮します。「レッドライト+PEMF」「クライオ+レッドライト」「クライオ+PEMF」など、あらゆる組み合わせが有効です。なぜなら、すべての治療法が細胞にアプローチし、細胞内のATP(アデノシン三リン酸)レベルを最適化し、免疫力を向上させ、代謝を活性化させるからです。

私たちはこれまで何千人ものお客様を見てきましたが、一般の方々であっても、治療の一環として凄まじい効果を実感されています。

私自身、現役時代にはトレーニング後のケアとしてクライオセラピーを活用していました。試合後は体内で非常に激しい炎症が起きますが、クライオに入ることで痛みが消え、体に「自己回復する弾力性(レジリエンス)」が戻ってくるのを感じました。ドーピングやサプリメントではなく、ただ自然に体をケアすることで、細胞が目覚め、そのポテンシャルが最大限に引き出されるような自己回復システムが働き始めるのです。この治療法には本当に深くインスパイアされました。

テーム・アリナ: なるほど。非常に実用的なメリットを得られたわけですね。

レッドライトセラピーの生化学的なメカニズムについてですが、これはシトクロムcオキシダーゼを介してミトコンドリアを刺激し、$\text{ATP}$の放出を促すというものです。なぜこれがより効果的なのか、詳しく説明していただけますか?

マイケル・スワ: はい、レッドライトセラピーは本当に素晴らしいものです。

今、日本では「サウナ」が非常に大きなブームになっていますが、中にはサウナでかえって疲れてしまう人もいます。過度なサウナ利用は、細胞を疲弊(消耗)させてしまうことがあるのです。

それに対して、レッドライトセラピーは心地よい温かさを提供します。レッドライト(可視光線)と近赤外線(不可視光線)が含まれており、この赤外線が体の芯まで加熱します。骨のレベル、さらにはミトコンドリアのような細胞の深部まで浸透して代謝を活性化させ、細胞自体を自律的に温めることができるのです。

人類のテクノロジーとして、レッドライトセラピーは極めて安全であり、いつでも好きな時に利用できます。ただパネルの前に座るか、レッドライトベッド(カプセル)に入るだけです。衣服を脱いで飛び込むだけで、いつでも利用可能です。

肉体的な疲労や消耗だけでなく、精神的なストレスを感じている時にも、気分転換(ムードチェンジャー)として非常に効果的です。また、就寝前に使用すれば、すぐに睡眠の質が向上するのを実感できます。

脳もまた細胞で構成されているため、脳の疲労回復や精神の安定にも非常に有効です。朝起きたときに、パネルやレッドライトの前で瞑想のように使用するのもおすすめです。細胞が呼び覚まされ、一日の始まりに向けて準備が整う感覚を得られます。

私自身、プライベートでもよく利用しています。日照時間が不足している時や、雨の日が1週間ほど続くときは、レッドライトセラピーを太陽の代わりとして使い、細胞を刺激しています。

レッドライトには、ビタミンDの生成を促すアンバーライト(琥珀色の光)のような、異なる波長も含まれています。ご存知のように、ビタミンDは免疫に非常に重要です。家の中に引きこもって日光を浴びずにいると、気分が落ち込むことがありますよね。植物と同じように、人間も太陽の光を浴びる必要があります。雨や曇りの日が続くとモチベーションが低下しがちですが、そうしたときにレッドライトセラピーが太陽光の継続的な代わりとして大いに役立ちます。私の日常生活に間違いなく欠かせないものとなっています。

テーム・アリナ: なるほど。生化学的な観点から、これらの組み合わせについて少し技術的に補足させていただきます。

クライオセラピーでは、痛みの緩和が起こりますが、その理由は神経伝導速度が低下し、内因性オピオイドの活性(体内における天然の痛み止め)が刺激されるためです。また、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL-1や IL-10)が減少します。局所的な血流と腫れが抑制され、その後のリバウンド効果(血管拡張)によって循環が改善され、老廃物の排出が促進されます。交感神経系の活性化は一種の「ホルミシス効果(適度なストレス刺激)」として働き、コールドショックプロテイン(冷刺激ショックタンパク質)を活性化させ、細胞内の老廃物の掃除を助けます。

次にパルス電磁界(PEMF)療法を併用すると、一酸化窒素(NO)の産生が調整され、血管の緊張度や血流、組織の修復に影響を与えます。多くのジムに通う人々が、血流改善のために一酸化窒素系のサプリメントを摂取していますが、PEMFはミトコンドリアの膜電位を変化させ、細胞エネルギーに影響を与えます。また、活性酸素種(ROS)シグナルの調整も行われます。

クライオが「物理的なホルミシス刺激(有益なストレス因子)」であるとすれば、PEMFも同様の刺激であり、炎症を調整し、穏やかな鎮痛効果をもたらします。

And then when you take red light therapy... つまりレッドライトセラピーと近赤外線(NIR)フォトンを照射すると、細胞内の受容体(ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼ)がそれらを吸収し、ATPの産生を高めます。ここでも活性酸素種(ROS)やカルシウム(Ca2+)シグナルが調整されます。これはPEMFやクライオとは異なるアプローチで作用し、一酸化窒素の放出も促進されます。

つまり、シナジーの観点から言えば、3つの異なるアプローチによるホルミシス刺激を組み合わせることで、体が自律的に炎症を抑え、痛みを緩和し、血流を改善する経路を繊細かつ強力に活性化させているのです。

冷水浴(アイスバス)と比べ、クライオチャンバー(冷却室)では熱が空気を通じて伝導するため、水(ほぼ 0℃よりもはるかに低い温度(時にはマイナス 100℃以下)の冷気を当てる必要があります。これにより、皮膚表面の血管が収縮し、血流が抑えられます。その後、PEMFが一酸化窒素NOの産生とシグナル伝達を全身で改善します。さらにレッドライト、特に近赤外線は皮膚を数センチメートル透過するため、表面的なケアに留まらず、循環系を通じて全身に波及効果をもたらします。

私が実践しているお気に入りのプロトコルは、まず短時間のコールドエキスポージャー(クライオセラピーで約3分間など)を行い、次に少し時間をおいて体温を戻し(再加温)、血流を正常化させます。その後に、血管膜や組織修復のシグナル伝達をサポートするPEMFを行います。最後にレッドライトや近赤外線を浴びるか、あるいはPEMFと近赤外線、レッドライトを同時に組み合わせます。

これらはすべて、トレーニング後の筋肉痛や関節のこわばりの緩和、運動からのリカバリーに極めて効果的であり、抗炎症効果自体がトレーニングによるダメージを和らげるため、次のワークアウトへより速く移行できます。私はこれを、単なる疲労回復にとどまらず、トレーニング間のスパンを短縮し、活動寿命を延ばすための「ロンジビティ(長寿)療法」としても捉えています。

プロのアスリートであれば、大会期間中や連続する試合の合間に、このような迅速なリカバリー技術を活用することは容易に想像できます。そして、多忙な日本の「サラリーマン」にとっても、非常に有益な手法となるでしょう。

マイケル・スワ: はい、まさにその通りです。

テーム・アリナ: 仕事の合間やフライトの移動などでも有効ですね。マイケルさんも米国から帰国されたばかりですが、早速クライオ、PEMF、レッドライトのコンボを受けて、東京で万全のコンディションを取り戻されたのではないですか?

マイケル・スワ: はい、日本に帰るフライトは時差もあるため、クライオ、PEMF、レッドライトの組み合わせは本当に助かります。時差ボケ(時差症候群)を解消し、体内時計や脳のシステムを再調整するのに非常に役立ちます。

クライオセラピーの歴史を振り返ると、そもそも$1978\text{ 年}$に日本の山口敏(Dr. Toshima Yamauchi)医師らによって発明された技術です。非常に興味深いことに、その後の20年間でヨーロッパやアメリカに広まり、現在になって再び日本に逆輸入されて「新しいもの」として注目されています。

先ほどおっしゃられたように、これらは全身の抗炎症システムを刺激するものであり、クライオセラピーもレッドライトも抗炎症が本質です。レッドライトは皮膚の浅い層の炎症にアプローチし、$\text{PEMF}$はさらに骨のレベルなど、身体の深部の炎症をターゲットにします。すべては「炎症を抑えること」に集約されます。

体から炎症を取り除くことで、体が自己修復プロセスに移行し、細胞が再び活性化・再生し始めます。私たちはクライアントの皆様に、まずは「炎症を抑えること」の重要性を説明しています。

テーム・アリナ: なるほど。ほかにこれらと組み合わせているバイオハック、サプリメント、食事プロトコル、あるいはテクノロジーはありますか?

マイケル・スワ: はい、個人的に「クレアチン」をずっと愛用しています。

現役のアスリート時代から私のベースサプリメントでしたが、ボクシングを引退した今でも贅沢に摂取し続けています。クレアチンはATPの産生を助け、脳を活性化し、思考をクリアにしてメンタルクラリティ(精神の明瞭さ)を高めてくれます。

そのため、私の基本サプリメントの一つとして、仕事前にはバターコーヒー(またはバナナやコラーゲン)と一緒に5g摂取しています。バターコーヒーもまた、脳を目覚めさせ、高いエネルギーレベルを維持するのに非常に適しています。

ビジネスの会議やスピーチ、カンファレンスに臨む前に、思考をクリアにして脳を刺激するために「クレアチン+バターコーヒー」の組み合わせは欠かせません。余計なものを大量に食べなくても、高いエネルギーと集中力を維持したまま最後までやり遂げることができます。もしサプリメントを一つだけ選ぶとすれば、私は間違いなくクレアチンを選びます。

テーム・アリナ: それを言っていただけて嬉しいですね。実は私も今、バターコーヒーを淹れたところなのですが、中に入っているものをご存知ですか?そうです、クレアチンが入っているんです。およそ 30gのクレアチンが入っています。

クレアチンは、細胞内のホスホクレアチンの貯蔵量を増やし、ATPの急速な再生を助けるため、クライオセラピー、レッドライト、PEMFと非常に相性が良いのです。特にホルミシス刺激によって細胞のエネルギー需要が高まっている時に、クレアチンキナーゼを介して ATP産生をさらに活性化させます。

このシナジー効果について語る人はあまりいませんが、クライオで炎症や痛みを抑え、PEMFやレッドライトで修復と循環を促進し、クレアチンで細胞のエネルギー緩衝能力を高めることで、組織がリカバリーシグナルに対してより良く反応するようになります。ですので、この組み合わせは極めて素晴らしい提案です。

また、脳へのメリットについて言及されたのも素晴らしいですね。これは単にジムで筋肉にエネルギーを供給したい人だけでなく、認知機能や回復力の向上にも効果があることが示されています。わずか4時間しか睡眠を取れなかった人でも、一気に $20〜40gのクレアチンを摂取すると、8時間しっかり睡眠をとってクレアチンを摂取しなかった人に比べて、認知テストや反応速度テストで良好なパフォーマンスを示すことがわかっています。脳の実行機能や反応に必要な、最も迅速なエネルギーバッファーとして完璧なサプリメントです。

マイケル・スワ: 脳機能にですね。まさにその通りです。

テーム・アリナ: では、欧米であまり注目されていないけれど、日本独自とも言える非常にユニークなバイオハックは何かありますか?

マイケル・スワ: はい。面白いことに、私はバイオハッカーにとって必要な「怠惰の法則(Laziness Principle / なまけものの原則)」という言葉を学びました。これは人間が新しいテクノロジーを革新するために不可欠なマインドセットです。

日本人は「がんばる(Ganbaru)」や「我慢(Gaman)」といった言葉に代表されるように、過酷な状況でも休息をとらず、ただただ懸命に限界を押し上げようと努力する気質があります。しかし、バイオハッカーには効率を重視する「怠惰の法則」のマインドセットがあります。これがイノベーションを推進するのです。

例えば、手洗いで2時間かけて洗濯板でゴシゴシ洗う代わりに、洗濯機を使うようになったのも、この「怠惰」というマインドセットから生まれたものです。

バイオハックも同様です。2時間雪の中に立ち続ける代わりに、わずか3分のクライオセラピーや10分間のアイスバスを利用することで、最小限の時間で最大の効果を得ます。このマインドセットは非常に重要です。「怠惰の法則」という言葉はネガティブに聞こえるかもしれませんが、実は画期的なバイオハック製品を創り出し、イノベーションを起こす鍵となるのです。

日本人には、この「怠惰の法則(効率主義のリカバー)」というマインドセットが必要かもしれません。実は日本人は、第二次世界大戦中に医師たちが$\text{PEMF}$(パルス電磁界)技術を発明するなど、様々なテクノロジーの先駆者でした。しかし、その技術の多くはヨーロッパに渡り、ドイツなどで長いPEMFの歴史として発展していきました。

テーム・アリナ: 興味深いですね。つまり、日本人はそれらの発見の最前線にいたのですね。

マイケル・スワ: はい、まさに。だからこそ、日本人には「怠惰の法則」や、バイオハックのシステムを利用したリカバリープロセスが必要なのです。日本にはすでに「禅(Zen)」の精神や雰囲気が根付いており、厳しい状況に立ち向かう精神性を持っていますが、回復(リカバリー)に目を向けること、つまり「効率的に怠ける」という視点が抜け落ちています。

最近ではアイスバスや「コールドプランジ(冷水浴)」が新しいトレンドになりつつあります。サウナと水風呂の組み合わせなどですね。これらはバイオハック的なリカバリーシステムの一種です。しかし、$\text{PEMF}$やレッドライトセラピーといった新しいバイオハックの潮流は、日本ではまだ新しく認知され始めたばかりです。私たちは日本人のマインドセットにこの変革を起こし、日本におけるバイオハックの普及を加速させる手助けをしたいと考えています。

テーム・アリナ: 非常に興味深いです。高パフォーマンス文化、リカバリー、そしておっしゃる「怠惰の法則(最小限の努力で最大のリカバリーを得るアプローチ)」の境界線。日本は非常に優れた哲学や概念を世界に発信してきました。

例えば、先ほどおっしゃった「生きがい(Ikigai)」は、健康的な行動の錨(アンカー)となる「目的」を意味します。バイオハックは、最も本質的で重要な部分に集中し、不要なものを削ぎ落とすことで、人生における実存的な摩擦を減らしてくれます。ティム・フェリスも「本質的でないものを削ぎ落とす(hacking away the unessentials)」ことについて語っていましたし、スティーブ・ジョブズのiPhoneのデザイン哲学もそうでした。無駄なノイズや散らかりを減らし、最高の効率を見出す。これはまさに日本の「改善(Kaizen)」の哲学そのものです。劇的にライフスタイルを変えるのではなく、睡眠のタイミング、歩く姿勢、食事の質など、毎日一つの変数を少しずつ継続して改善していく(微修正を繰り返す)。これが「改善」です。

また、冷気、呼吸、瞑想に関心のあるバイオハッカーにとって非常に興味深い言葉に「禊(Misogi)」があります。これは冷水、呼吸、詠唱(チャント)を通じた儀式的な心身の浄化です。本質的には「規律ある不快(disciplined discomfort)」、つまり心地よくない状況を進んで受け入れることで自分を強くする行為です。

その対極にあるのが「座禅(Zazen)」や禅の瞑想です。これは単なるリラックスだけでなく、不快な感覚を受け入れ、人生の出来事に対して過剰に反応しない精神を養うアプローチです。

そしてもう一つ、食べ過ぎを防ぎ適度な満腹感を保つ「腹八分目(Hara Hachi Bu)」という食事哲学もあります。日本の弁当箱(bento box)のアイデアも、過食を防ぎ、必要十分な量だけを食べるという思想から来ています。欧米人のように暴飲暴食(Binge eating)をしないための優れたアプローチです。

さらに、自然とのつながりを通じて自律神経を整える「森林浴(Shinrin-Yoku)」もあります。森の中をゆっくり歩き、自然光を浴び、感覚の焦点を慢性的なストレスから周囲の自然環境へとシフトさせ、環境に身を委ねます。日本の医師たちは、忙しいサラリーマンに対してこれを処方することすらあります。

このように、日本人は心身を整え、継続的な改善を通じて自分を高めるための生き方や哲学を数多く生み出し、貢献してきました。製造業においても、トヨタ生産方式(カイゼン)に代表される、組み立てラインの継続的な改善プロセスを確立しました。バイオハックもまた、これと同様に、人間の身体と精神に対して、継続的かつ反復的なアプローチを適用するプロセスと言えるでしょう。この私の捉え方は合っているでしょうか?

マイケル・スワ: おっしゃる通りです。しかし、現在の東京のようなハイテク都市では、多くの日本人が大地(日本の土壌)との繋がりという本来のルーツを忘れてしまっています。東京は非常に大きなテクノロジー都市ですから、コンクリートの上を歩き、車に乗り、靴を常に履き続ける生活の中で、自然なリラクゼーションの原点を忘れがちです。

だからこそ、私たちは本来あった良い刺激や豊かなマインドセットを、日本の次の世代に広く伝えていく必要があります。バイオハックとは、単に最新のテクノロジーを使うことだけでなく、私たちが忘れかけている「自然への接続」を思い出させるマインドセットそのものです。

大地に足をつけ、森林へ行って深呼吸をし、きれいに浄化された水を飲み、太陽の光を浴び、自然な食べ物をいただく。日本には数多くの機能性食品や薬膳があります。これらを細胞に思い出させてあげることで、細胞が喜び、私たちの人生も豊かになります。しかし、東京の多忙な人々はこうした本質を見失いがちです。

テーム・アリナ: 実に面白いですね。日本人にはもう二つの重要な哲学を思い出す必要があると思います。

一つは「間(Ma)」です。これは意図的なスペース、静寂、あるいは余白を重んじる禅の思想です。現代の言葉に訳せば、情報のインプットを減らし、スマートフォンを見る時間を減らし、タスクとタスクの間の静寂を取り戻し、認知的負荷を削減することです。

もう一つは「侘び寂び(Wabi-Sabi)」です。これは不完全さや諸行無常を受け入れる美学であり、現代の行き過ぎた完璧主義へのアンチテーゼ(解毒剤)となります。健康やウェルネスの観点から言えば、老化、体型、過度な最適化に対する過剰な不安を和らげて、人生にバランスをもたらす鍵と言えます。

マイケル・スワ: はい、まさに。私たちが人間として生きる上での本質を思い出す必要があります。その通りです。

テーム・アリナ: では、もう一つの言葉である「根回し(Nemawashi)」について説明していただけますか?

マイケル・スワ: 「根回し」とは、ビジネスや政治の場において、あらかじめ下準備(Groundwork)や合意形成を行うことです。水面下でどのように動いているかは表からは見えませんが、物事を円滑に進め、全員に最大のメリットをもたらすための事前調整(下準備)の動きを指します。

テーム・アリナ: なるほど、要するに準備、静かな準備ですね。反応(アクション)を起こす前の。

日本人のこうした哲学からは学ぶべきことが非常に多いです。お話を伺っていると、現代の日本人は時折自分たちの優れた哲学を忘れてしまっているようですね。

マイケル・スワ: はい、特に東京の若い世代は、現代的な暮らしを求めるあまりその傾向が強いです。だからこそ、時には郊外へ行って神社を訪れたり、歴史のルーツを学ぶ必要があります。

日本には初代天皇から連なる2600年以上の深い歴史があり、独自の食文化や休息の知恵を持っています。例えば、かつての日本人は地面(床)で生活していたため、敷布団(Futon)という薄いマットのようなものに寝ていましたが、当時はほとんど腰痛がありませんでした。現代のベッド生活への移行により、多くの人々(約60〜70%)が腰痛を抱える潜在的な原因となっています。私たちは自分たちのルーツである伝統文化を今一度思い出すべきです。

テーム・アリナ: 最近、SNSのインフルエンサーが「30日間床で寝る」というチャレンジをして、腰痛が消えたと投稿しているのを見ました。最初はかなり痛かったそうですが、体が適応してからは調子が良くなったそうです。

これらを現代の「バイオハック・スタック(最適パッケージ)」として要約すると、習慣には「改善(Kaizen)」、ノイズ削減には「間(Ma)」、注意力の向上には「座禅(Zazen)」、自律神経の回復には「森林浴(Shinrin-Yoku)」、適度な食事行動には「腹八分目(Hara Hachi Bu)」、過剰な完璧主義を防ぐには「侘び寂び(Wabi-Sabi)」を取り入れることができます。

一方で、日本の規律ある努力の文化を意味する「がんばる(Ganbaru)」という姿勢は、適度な「回復(リカバリー)」を伴わなければ逆効果になります。仕事と同じくらい、回復も真剣に捉えるべきです。これは交感神経と副交感神経のバランスと同じで、成長には刺激が必要ですが、同様に休息とリカバリーも不可欠です。回復をおろそかにすれば、どれほど努力しても真のバランスやパフォーマンスは得られません。バイオハックは、多忙な都市生活の中で、私たちが失いかけていたこのバランスを思い出させてくれます。

これはあなたのボクサーとしてのキャリアや、クライオ、PEMF、レッドライトといったリカバリー技術の導入とも見事に繋がっています。強靭さ(レジリエンス)こそが鍵です。私は「The Resilient Being」という本を書きましたが、本質は強靭になり、いかに早く回復(bounce back)できるかということです。限界まで疲弊したとき、いかに意識的に、効率的に回復できるか。

私は合気道や柔道、空手などの武道を学んできましたが、技の練習と同じくらい、瞑想や呼吸法、無駄な力を抜くマインドフルな動きを学びました。これは最高のパフォーマンスが「リラックス」から生まれるためです。心身が凝り固まり、過剰反応してしまえば、すでに勝負に敗れていることになります。そう思いませんか?

マイケル・スワ: その通りです。リラックスは私たちの身体が持つ「最も強力な(invincible / 無敵の)」状態です。

脳の心に十分な余白(スペース)を作ることで、視野を広げて物事を捉え、正しい決断を下し、多くのアイデアを生み出し、大切な人を守ることができます。リラックスこそが無敵の源です。しかし、文明社会を生きる私たちは過度なストレスに直面し、自然とのつながりから切り離されています。だからこそ、温泉に行ったり、森へ行って深呼吸をしたりして、意図的に緊張を緩め、マインドセットをリセットする必要があるのです。それこそが日本の温泉文化などの原点です。

テーム・アリナ: 日本にはサウナ文化があり、私も東京近郊の素晴らしい場所を訪れました。箱根は富士山も近く、最高の場所ですね。もし東京に来ることがあれば、ぜひ箱根の伝統的な旅館に宿泊し、美しい山々の景色と温泉を楽しんでほしいです。以前、私の友人でありホロライフ・センターのパートナーでもあるタテキさんと一緒に、箱根の朝に温泉に入ったのは、一日をスタートさせるのに最高の体験でした。

ただ、東京の中心部にある温泉やサウナに行った時は、面白い矛盾を感じました。約20人の日本人が非常に良い姿勢でサウナに座り、大きなフラットスクリーンテレビで少しおかしな食べ物のCMをじっと見つめていたのです(笑)。リラックスしにサウナに来ているのに、大きなテレビがあってそれを観ているというのは面白かったです。個人的にはやはり、箱根の山の中で静かに楽しむサウナ体験のほうが好みですね。

マイケル・スワ: 箱根は私も大好きです。山々に囲まれた温泉は本当に美しいです。山を登り、ハイキングをする人たちの多くは60〜70代ですが、皆さん驚くほど足腰が安定しており、姿勢も一切崩れず、非常に速いペースで力強く歩いています。彼らが健康で長寿を保てているのは、豊かな自然の中で新鮮な空気を吸いながらハイキングをしているからに違いありません。

テーム・アリナ: 新幹線を使えば、忙しない東京を離れてすぐにこうした素晴らしい田舎町へ行けますね。東京でのホロライフ・サミットの後、私は野沢にある小さな温泉街を訪れました。そこには10〜15ほどの共同浴場(外湯)があり、24時間近く開いていました。街中の人々がただ浴衣を羽織って、温泉から温泉へと歩いていて、とても素敵でリラックスした体験でした。バイオハッカーの皆さんにはぜひ体験してほしい場所です。

マイケル・スワ: 自然や温泉の中には、私たちを取り囲む天然の周波数が満ちています。自律神経を落ち着かせ、ストレスを軽減し、筋肉の緊張をほぐすポジティブなエネルギーがそこには存在しているのです。

テーム・アリナ: 素晴らしいですね。ちなみに私が訪れたのは「野沢温泉」です。13の共同浴場があり、山々に囲まれた有名な温泉地です。車で行くと時間がかかりますが、北陸新幹線などを使えば比較的スムーズにアクセスできます。ウェルネスデスティネーションとして非常に評価が高い場所です。

さて、もし人々が「CRYO TOKYO」の活動に関心を持ち、東京へ来た際に施術を受けたい場合、会社としてどのようなサービスを提供されていますか?麻布十番にある「CRYO TOKYO NEO」などでは何を体験できるのでしょうか?

マイケル・スワ: 私たちの店舗では、クライオセラピー、レッドライトセラピー(Neo Light)、PEMFを提供し、ウェルネスレベルの向上やストレスのない高いエネルギーを引き出します。これにより、お客様の体が本来持つ高いポテンシャルを発揮し、まるで10年前、20年前の自分の年齢に戻ったかのような活力を実感していただけます。

身体的な疲労回復や怪我のケアだけでなく、不眠(睡眠障害)、うつ、不安といった精神的な悩みを持つ一般のお客様も多くいらっしゃいます。日本は非常に過酷に働く国ですので、10人中9人ほどの高い割合で多忙なストレスに悩まされています。私たちはそうした方々に、精神的な不安や肉体的な不調を軽減するためのトレーニングおよびセラピーシステムを提供しています。

アスリートのお客様は全体の約3割で、残りの約7割はこうした多忙な一般のお客様です。都会で暮らす人々こそ、こうした本物の治療法(セラピー)を求めています。

テーム・アリナ: まさにバイオハックテクノロジーの起源ですね。マイケルさんがおっしゃったように、クライオセラピーはそもそも1978年に日本の山口敏(Dr. Toshima Yamauchi)医師が関節リウマチの痛み管理、腫れ、こわばりの治療のために研究・発明したものです。彼の先駆的な取り組みにより、世界初の全身用クライオチャンバーが日本で建設されました。

彼のアプローチは冷水浴とは異なり、ゆっくり冷やすのではなく、短時間で極めて強烈な冷気(超低温の空気)に曝露させることで、芯まで凍らせることなく皮膚表面の温度を急速に下げるというものでした。これにより、皮膚の冷却を介して痛みに対する感受性を瞬時に減少させます。その後、この技術はヨーロッパや世界のスポーツ回復センターに広まり、現在の全身クライオセラピー産業へと発展しました。

そして今、「CRYO TOKYO」とマイケルさんの先駆的な取り組みのおかげで、この技術が再び日本に帰還し、逆輸入されて素晴らしいカムバックを遂げました。

マイケル・スワ: ありがとうございます。本当に光栄です。

テーム・アリナ: もし「CRYO TOKYO」についてもっと知りたい場合、どのウェブサイトやSNSアカウントをチェックすればよいでしょうか?

マイケル・スワ: Googleで「CRYO TOKYO」や、麻布十番にある「CRYO TOKYO NEO」と検索していただければ、私たちのサイト(cryo.tokyo)がすぐに見つかります。私たちは東京で唯一、クライオセラピーと最先端のバイオハック(PEMFやレッドライトなど)を複合的に提供しているサロンです。

InstagramやFacebookなどのSNSでも情報を発信しています。東京にお越しの際は、ぜひ気軽にお立ち寄りください。全力でケアさせていただきます。

テーム・アリナ: 素晴らしいですね。本当にありがとうございました、ゼネラルマネージャーのマイケル・スワさん。ありがとうございました!

マイケル・スワ: こちらこそ、ここに来られて本当に楽しかったです。どうもありがとうございました。

テーム・アリナ: 本当にありがとうございました。

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