「禅に基づく長寿」はこうして形になった:HOLOLIFE Summit Tokyo 2025 開催レポート

by Tateki Matsuda

 

2025年10月10日・11日、渋谷 PARCO 18F「Dragon Gate」にて、HOLOLIFE Summit Tokyo 2025 が開催されました。テーマは「The Zen of Longevity(禅に基づく長寿)」。世界中から研究者・医師・実業家・アーティスト・禅僧が集まり、日本発の新しいウェルネスの形を提示した2日間となりました。本記事では、主催であるHOLOLIFE Center Japan の視点から、その全体像と意義をレポートします。


1. HOLOLIFE Summit Tokyo 2025 開催概要

  • テーマ:The Zen of Longevity(禅に基づく長寿)

  • 日程:2025年10月10日(金)・11日(土)

  • 会場:渋谷 PARCO 18F「Dragon Gate」

  • 主催:HOLOLIFE Center Japan

  • 参加者:日本国内外からのウェルネス実践者、医療・研究機関、スタートアップ、企業関係者 など

Dragon Gate の会場は、2日間ほぼ英語が飛び交う「グローバルなウェルネス・ハブ」となりました。参加者の多くが海外からの来場者であり、日本人参加者にとっても、世界のウェルネスの最前線を「東京で体験する」機会となりました。

HOLOLIFE Summit は、バイオハッカーサミットとして10年以上続いてきた歴史を持ちます。その文脈の中で、東京開催は「禅」と「長寿」をキーワードにした新しいチャプターとして位置づけられました。


2. コンセプト:「自己最適化」から「自己実現」へ

今回のサミットの根底にあった問いは、
「長寿の未来は、単なる“最適化”でよいのか?」
というものです。

ホロライフ理事でありキュレーターの Teemu Arina 氏は、基調講演で次のようなメッセージを発しました。

「バイオハッキングの時代は終わりました。これからは HOLOLIFE の時代です。」

ここで示された転換点は、数値やデバイスに偏った「自己最適化(Self-Optimization)」
から身体・精神・社会・スピリチュアリティを含む「自己実現(Self-Realization)」
へと視点を広げることです。

健康データやプロトコルは重要です。しかし、それだけでは人間の全体性は扱いきれません。真の長寿は、自分の身体だけでなく、社会とのつながり、文化や叡智との対話、コミュニティとの関係性を含んだ「統合されたウェルネス」の中で育まれる、というのが HOLOLIFE の立場です。


3. 東洋と西洋が交わるステージプログラム

HOLOLIFE Summit Tokyo 2025 の特徴は、「科学・禅・アート」が一つのステージで交差した点にあります。

主なプログラム例

  • 老化生物学:
    ボストン時代から松田干城が交流のある、老化研究の専門家による講演。長寿研究の最新知見を、日本の文脈に落とし込む内容が共有されました。

  • 水素研究・分子レベルのアプローチ:
    大学・研究機関の教授による、水素や分子栄養学に関する講演。バイオハックとしての応用可能性と、臨床データが紹介されました。

  • 禅とテクノロジーの対話:
    日本のインターネット黎明期からテック業界を牽引してきたキーパーソンによる、禅とデジタル社会に関するパネルディスカッション。

  • マインドフル・イーティング(食べる瞑想):
    食事を単なるカロリーではなく、「意識」と「身体」をつなぐ実践として捉え直すセッション。和食文化とマインドフルネスが融合した時間となりました。


4. 禅僧アーティストによる「呼吸とビート」の橋渡し

禅僧・赤坂陽月さんは、バンド編成でのライブパフォーマンスを披露しました。禅の呼吸法、ビートボックス、432Hz の楽器、ライブループ、これらを組み合わせたステージは、「寺院の修行」と「現代音楽」がシームレスに接続する瞬間を会場にもたらしました。

長年続いてきた仏教の実践が、最先端のサウンドテクノロジーを通してアップデートされる。この象徴的なシーンは、「禅に基づく長寿」というテーマを、言葉ではなく体感として伝えるものになりました。


5. EXPOゾーン:身体で理解する「長寿の実験室」

EXPO フロアは「変革のための実験室」をコンセプトに構成されました。

来場者は、自分の「オペレーティング・システム」を再起動する感覚を体験しました。

  • マイナス100℃クラスのクライオセラピー・チェンバー(冷却療法)

  • 赤外線サウナによる深いリカバリー体験

  • 脳波と光刺激を用いた瞑想デバイス

  • CBD を使ったリラクゼーション・フード

  • 水素吸入・水素サプリメント

  • 遺伝子検査、炎症マーカーを可視化する血液検査キット

  • ウェアラブルデバイスによる睡眠・回復のトラッキング など

EUで開催されるホロライフサミットと比較すると、東京会場はコンパクトです。しかし、海外スピーカーや企業の協力により、「世界の最前線」を日本語と英語の両方で体感できる濃度の高い場になりました。


6. 参加者が見せた「感謝の表情」

主催チームにとって印象的だったのは、体験後の参加者の表情でした。「数値が伸びた」ことに満足する顔、デバイスの性能に感動する顔だけではなく、「自分の身体を大事にしたい」、「この場を作った人たちへの感謝を伝えたい」という、柔らかな表情が多く見られたことです。

一部の参加者は、このサミットを「トレードショーではなく、“感謝の文化祭”のようだった」
と表現しました。HOLOLIFE が目指すのは、データで可視化できる「Quantified Self(数値化された自己)」と、目に見えない「Mysterious Self(神秘的な自己)」の両方を尊重する文化です。

今回の東京サミットは、そのビジョンが現実の場として現れた初めてのケースと言えます。


7. 今後の HOLOLIFE Summit と日本の役割

HOLOLIFE Summit は、東京での開催を一つの起点として、今後もヨーロッパや他地域での展開を続けていきます。次回は 2026 年 5 月にアムステルダムでの開催が予定されています。

HOLOLIFE Center Japan は、日本独自の「調和」や「禅」の価値観、和食や温泉・サウナ文化、コミュニティを通じた長寿の知恵などを世界に発信しつつ、海外からの知見を日本に「逆輸入」する橋渡し役を担っていきます。

「禅に基づく長寿」は、古代の叡智か現代科学かどちらか一方を選ぶ話ではありません。

両者は本来切り離せないものである、という前提に立ち、HOLOLIFE はこれからも「生き方としてのウェルネス」を探求していきます。


8. お知らせと今後のアップデート

今回のサミットの様子は、順次レポート記事や動画コンテンツとして公開予定です。公式サイトや各種 SNS にて、次回サミットや関連イベント、オンラインコンテンツの情報を発信していきます。

最新情報は、HOLOLIFE Center Japan の公式サイト「NEWS」ページをご覧ください。今後も、HOLOLIFE の活動を通じて、「真に生きている」と感じられる時間を共有できれば幸いです。

 


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